妻の不貞行為で500万円の慰謝料支払い事案
事例まとめ
案件概要
Aさん(元夫)は、Bさん(元妻)と離婚をしましたが、BさんがAさんとの婚姻期間中にCさんと不倫をしていたことがその原因でした。
Aさんは、Bさんが不倫をしたこと、また、それによりBさんとの夫婦関係を破壊され、離婚に至ったことに心を痛め、BさんとCさんに対して、慰謝料を請求することにしました。交渉の結果、BさんとCさんは不倫関係にあったことを認め、慰謝料として500万円を支払いました。
関係者
Aさん:当事務所の依頼者。40代
Bさん:Aさんの元妻。40代。Aさんとの婚姻中にCさんと不倫。離婚後もCさんと交際していた
Cさん:Bさんの不倫相手。50代
ご相談に至る経緯
Aさんは、本件が表沙汰になることは避け、また、できるだけ早く本件を解決したいとので、交渉によって解決することを望んでおられました。
解決のポイント1~裁判による解決のメリットとデメリット~
メリット
裁判による解決の場合、いったん慰謝料の支払いを命じる判決が出れば、相手方が支払いを拒否していても、支払いを強制できる効力があります。
デメリット
解決までには、数カ月から事案によって1年以上もかかるなど長期間になるおそれがあります。また、証拠を収集する労力、裁判の進行によっては尋問として本人に裁判所まで出向いてもらい公開の法廷で話してもらわなければならない場合もあります。
このように、本人にとって、時間的・精神的な負担が大きくなる傾向があります。
解決のポイント2~交渉による解決のメリットとデメリット~
メリット
交渉による解決の場合、本人に裁判所に出頭していただく必要もありません。また、裁判と比較して短期間で解決できる場合が多いです。
デメリット
相手方がこちらの請求に応じなかったり、極端な場合にはこちらの請求を無視したりすることもあります。そのような場合、協議が難航し問題を解決できなくなってしまいます。
問題の解決に向け、どのような方法を選択するかは各方法のメリット・デメリットを理解しておくことが大切です。本件では、このようなメリット・デメリットを依頼者に伝えたうえで、依頼者の希望である交渉による解決を試みることにしました。
当法律事務所の活動
交渉による解決の場合、あくまでも両者が解決内容に合意しなければ交渉は成立しません。
そのため、依頼者の主張を一方的に主張するのではなく、相手方の要望にも耳を傾け、双方の主張の着地点を探ることが重要です。
Aさんの希望・主張
Aさんは、最低限の金額の確保ができれば、金額については請求金額から減額も可能だが、早期解決のメリットは譲歩できないと考えていました。
Bさんの希望・主張
Bさん、Cさんもまた、できるだけ裁判にすることなく、早期に解決することを志向していました。
当初、Aさんの意向に沿って、離婚の原因を作ったBさんに500万円、Cさんに300万円をそれぞれ、請求しました。その後、両名から連絡があり、弁護士と交渉を開始しました。
弁護士のアドバイスに従い、自身の希望とBさんの要望に折り合いをつけた提案、つまりBさんが500万円を支払うことで、Cさんの支払いを免除するという提案を行いました。
結果
Bさんは、Bさんが500万円を支払うことで、Cさんの支払いを免除するという提案を受け入れ、Bさんは、Aさんに対して500万円を支払うことにより解決しました。
また、交渉のみで解決に至りましたので、Aさんのご希望どおり、約3カ月で解決しました。金額が大きいだけに長期化が懸念されましたが、比較的短期間で解決できました。
担当弁護士コメント
本件では慰謝料として500万円を獲得できたが、この金額は近時の不貞事件に関する裁判実務では破格の金額と言えるだろう。仮に裁判になると、もっと低額に抑えられていた可能性が高い。
しばしば「慰謝料の相場はいくらですか。」という質問を受けるが、実際の所相場などあってないようなものである。ただ、私の経験によると、裁判官は、慰謝料の算定にあたって、①不貞行為が夫婦にもたらした結果(夫婦関係はまだ維持されているか、別居や離婚にまで至ったか)、②不貞行為の回数・期間、③婚姻期間の長さ、④子ども(特に未成年)の有無などといった要素に着目することが多いようである(もちろん、これら以外にも考慮要素はあるであろうが)。
私がここ1~2年間で取り扱った不貞事件で、裁判(調停も含む)まで進んだものでは、100万円~200万円の範囲で解決した例が多いと思う。
その意味では、今回の事件は、裁判まで進むことなく、任意交渉で解決に至ったがゆえに得られた成果であろう。早期解決という相手方の志向をうまく汲み取って交渉に当たれば、このような成果を挙げられることもあるのである。
依頼者は調査費用等でかなりの出費をされたようだが、差し当たり請求どおりの慰謝料を回収できたことで依頼者も大いに安堵されておられた。