精神的な苦痛に対する償いとしての慰謝料
慰謝料とはどのようなものなのか?
慰謝料とは、精神的な苦痛を受けた場合に、その原因を作った相手に対してそれを償ってもらうためのお金(損害賠償金)のことをいいます。不倫やDVなどで受けた精神的な苦痛と、これらの行為が原因で、離婚しなければならなくことに対する精神的な苦痛、それぞれに対して慰謝料を支払ってもらうことができます。
慰謝料(=損害賠償金)を請求するには、相手の行為が違法であることが必要です。そのため違法であることが明らかな不倫やDVなどが原因での離婚では慰謝料が認められることが多いのですが、単に性格が合わないというだけでは慰謝料を請求することはできません。
慰謝料はどのような場合に認められるのか
慰謝料が認められる場合
- 生活費などを渡さず、夫婦の扶助(協力)義務を果たしていない場合
- 正当な理由もなく、性交渉を一方的に拒否するなど、夫婦関係が正常でない場合
- 不倫などの不貞行為があった場合
- 家庭内暴力(DV)を受けていた場合
慰謝料が認められない場合
- 性格や価値観が合わないなどの違法性のない理由による場合
- 離婚を要求された相手側に離婚の原因がない場合
- 離婚の原因が夫婦それぞれにある場合
どのくらいの慰謝料を支払ってもらえるかは状況により異なります
どのくらいの慰謝料支払ってもらえるのかは、どのような過程で離婚に至ったかによって夫婦ごとに違ってきます。ただ全く同じではなくても、状況の似た離婚の前例は多くあるため、大体の相場を知ることはできます。主な状況ごとの相場は以下のようになっています。z
慰謝料の金額はこのような要素で決まります
- 子供がいるかどうか、子供が何人いるか
- 夫婦の年齢、性別、収入など
- 離婚によって受ける経済的な影響の大きさ
- どのくらいの期間結婚していたか(同居期間・別居期間)
- 法律に定められた離婚原因が離婚の主な原因となっているかどうか
- 不貞行為やDVがあったかどうか
不貞行為が原因で精神的に苦痛を受けた場合
不貞行為が原因の慰謝料は、100〜300万円が相場です。不倫や浮気の期間や回数、不貞行為に至ったきっかけ、不倫された側が受けたどのくらい肉体的・精神的苦痛を受けたかなど、個別の事情を考慮して金額を決めていきます。
DVなどで精神的・肉体的な苦痛を受けた場合
DVが原因の慰謝料は、50〜300万円が相場です。金額を決める上では、精神的・肉体的な暴力がどの程度あったか、けがや後遺症の程度、暴力を振るうようになったきっかけや頻度などが重要な要素となります。特に繰り返し暴力を受けていた場合や重い後遺症が残った場合などには、慰謝料も高額になります。
生活費を渡してくれないような場合
生活費を渡してくれないなどが原因となった場合の慰謝料は、50〜300万円が相場です。裁判では100万円を基準として、生活費を渡さなかった理由や同居しない理由など、夫婦が互いに協力し合う義務(=扶助義務)を果たさなかった事情を考慮して最終的な金額を決定します。
正当な理由なく、一方的に性交渉を拒否されていた場合
いわゆるセックスレスが原因となった離婚の慰謝料は、100〜300万円が相場です。不倫をしており、その相手とは性交渉を持っていた場合には、単なるセックスレスに比べて悪質だとされるので責任が重くなり、慰謝料も高額になります。
慰謝料を請求するためには
慰謝料を請求するには、まず話し合いで相手から慰謝料を支払ってもらえるように試みます。そこで慰謝料の支払いに応じてもらえなければ裁判によって請求することになります。
相手に直接交渉して、慰謝料の支払いを求める
相手に直接慰謝料の支払いを求める方法としては、書面で行う方法と口頭(対面・電話)で行う方法があり、それぞれにメリット・デメリットがあります。
書面で行う場合
メリット
- その場ですぐに応答しなくてもいいため、時間をかけて考えて対応できる
- 主張したい内容が文書になっており、記憶違いや誤解などのリスクが少ない
- 内容証明郵便を使うので、相手を威嚇する効果がある
デメリット
- 相手にも反論するための時間を与えることになる
- 口頭で行う方法に比べて、時間がかかる
口頭で行う場合
メリット
- その場で相手に責任を追及できるため、反論する時間を与えずに済む
- お互いの主張を直接言い合うことができるので、必要以上に時間をかけなくてもいい
デメリット
- その場で回答しなくてはならないのはどちらも同じで、相手の知識や交渉力次第では逆に不利になってしまう可能性もある
- 主張内容が、目に見える形で残らないため、後々内容に関して言った言わないのトラブルになるリスクがある
このように、「書面」「口頭」どちらの方法で慰謝料の請求を行うにしても、それぞれメリット・デメリットがあるため、個別のケースごとに最も適した方法を選択しなくてはなりません。どちらの方法を選んだとしても、交渉を有利に進めるために、専門家のサポートが必要です。
弁護士は交渉において代理を務めることもできるので、まずはご相談いただくことをお勧めします。
裁判で慰謝料の支払いを求めるにはどうしたらいいのか
裁判で慰謝料の支払いを求めるためには、まず離婚裁判を行う必要があります。離婚裁判を始める際に家庭裁判所に提出する訴状には、慰謝料の支払いを希望する旨やその希望額、根拠となる離婚原因(不倫やDVなど)を記入する箇所があります。
離婚原因があったことを証明する義務は離婚や慰謝料を請求した側にあり、裁判官を納得させるための証拠を用意しなければいけません。実際の裁判ではまず訴状に記載された内容を主張し、それに相手が反論し、その反論にまた反論するということを繰り返して審理が進んでいきます。
裁判手続きの途中で、裁判官から慰謝料に関する内容も含んだ「和解」を勧められることもあります。
ここで裁判官から提示された和解案にそれぞれが納得して和解を受け入れると、裁判はその時点で終わり、慰謝料の条件も含めて離婚が成立します。和解が成立しなかった場合や、そもそも和解の提案がなかった場合には、そのまま裁判が進み、慰謝料の有無や条件を含めた「判決」が出ます。
裁判の手続きには専門的な知識と時間が必要であるため、精神的な負担も大きくなります。なるべく負担を軽くし、希望通りの結果を得るためにも、弁護士の力を借りることも重要です。
当事務所の慰謝料請求サポート
弁護士のサポートで離婚交渉を有利に進めることができます
離婚に関する手続きを行うことのできる専門家として、行政書士も協議離婚が成立した場合の離婚協議書の作成や慰謝料請求に関する業務を行うことができます。
ただし、夫婦間で争いになっている場合に、相手との交渉を行ったり、訴訟に関与することはできず、このような業務を行うことは法律によって、弁護士にしか認められていません。
そのため話し合いがほぼまとまっているような場合には行政書士によるサポートでも問題ない場合もありますが、話し合いがこじれていたり、争いが起こっている場合には、交渉自体にも参加できる弁護士に依頼すべきです。
現時点では離婚問題が大きくなっておらず、自分で交渉を行うことを考えている場合でも、交渉の方法によっては時間的・精神的な負担が大きくなってしまったり、交渉が不利になってしまう可能性もあります。
その点、弁護士のサポートがあれば、交渉の最初の段階から解決まで一貫して関わることができるので、手続きや交渉がスムーズに進み、離婚問題の早期解決につながります。時間的・精神的な負担を軽くし、離婚という難しい問題を乗り切るために、当事務所では経験豊富な弁護士がサポートいたします。